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キッチン・ナイフ 
若い人たちを相手に、いわゆる「たたら」を話題にすると、その結末は必ずジブリの「もののけ姫」になってしまう。そして、同じ話題を年長者にすれば、こんどはこれがあたりまえのように「やまたのおろち」の伝承にすり変わる。

全国的レベルでこれがどのように変わるか解からない。しかし、我が焚き火小屋ではこれまでのところそうなのだ。そして「そうではなくて、"鉄の文化としてのたたらの話”をしようじゃないか!。」と言えば、大半の人が無口になる。島根にしてそうなのだから全国的に調査しても"推して知るべし”状況にあるのだろう。

斐伊川流域の砂鉄を採取し、鉄を湧かす技能集団が山陰の山間部に入ったのは、一説に6世紀中頃だと聞く。そして確かに島根には、金屋子、金山、菅谷、芦谷、赤穴、赤池などなど、数えあげればキリがないほどにこの「たたら」に関わる神社や地名が多くある。これらを旧吉田村にその産業遺構として保存される「菅谷鑪」の存在をも意識しながら考えれば、かつてこの地の人々の暮らしが、この文化にどれほど大きく支えられてきたか、もう少し意識されてしかるべきだろうと思われる。

しまね自然の学校は、島根の風土や風景の中に当たり前にあるものにすべてを委ねて、島根の子どもたちの育ちの支援を意識してきた。そして、その複合的なサポート体制の中には『鐵』の文化塾という、この文化に造詣深く、また島根の歴史としてのそれにも関心の高いメンバーが幾人もいる。

必然、その地形に"鉄穴(かんな)流し”の影響が残る野や山や斐伊川などをその野遊びのフィールドに選んできた。また、その鍛造体験の意義も含めて、金属廃材を素材に「自分のナイフを自分で作る!」プログラムを続けてきた。しかし、この数年にナイフが使われて起る一連の事件を考えれば、「子どもたちの育ちに大きな意味のあること」と理解しても、ナイフを作るプログラムなどは、その継続が難しいとを感じている。

同じ理由で、自身がこの二十年ほどをライフワークとしてきた「カスタム・ナイフ・メーキング」もここしばらく止めていた。しかし、同時に、「人類の歴史にもっとも永く深く関わる刃物の文化を、わずかに50年にも満たない現代社会のトラブルに連鎖して簡単に捨ててしまうことが、本当に良いのか!。」という疑問も常にあった。

そんなことを考えながら、先日、焚き火小屋の増設作業をしていて、溶接の閃光の中に閃くものを感じた。

" 現代の刀狩り"とでも言うべき状況も感じられなくもないが、いわゆる「ダガーナイフ」などを取り締まるべきは正論だ。なぜなら、現代社会に"戦うためにデザインされたナイフ”など、断じて不要なものであるはずだからだ。しかし、だからと言って、一連の社会的な動きのさきに"刃物の類は危険だから、人々の暮らしから、そうしたものをすべて遠ざけよう”とする状況はあってはならないことだ。

では、どうすべきなのか!。

それは「デザインを考える!」ことだと、溶接の閃光のなかに気づいたのだ。暴力には機能させず…。しかし、暮らしの中のツールとして機能と美しさを兼ね備えて、キッチンやダイニングに、女性たちが心地よく使えるナイフを作るべきだと考えたのだ。

写真は、従来の「カスタム・ナイフ・メーキング」の技法でつくったブレードと、医療用ステンレスのパイプを鍛造・整形してつくったグリップとを溶接して仕上げたキッチン・ナイフだ。その形状からいえば「インテグラル・ナイフ」になるだろうか。つまり、ブレードの先端からグリップ・バックまでが完全に一体の素材からなる。(厳密に言えば、ここでは2種類の素材を使っているが、形状としてはそうだということ。)

意識したことは、これまでの調理用のナイフに比べ衛生的であること。また、ツールとしてのナイフの使い方の基本は、じつは"小指で握ること"にあるのだが、これをデザイン的に意識することで、武器として使いにくくなるように道具としての機能をコントロールした。さらに、ミラー・フィニッシュ(鏡面仕上げ)にすることで見た目の美しさと、それ以上に、メンテナンスが簡単に出きるように考えたつもりだ。

ともあれ、その使いごごちも、美しさにしても、この感覚的なものはそれぞれに違うものだろう。だけに、正直をいえば、そのベストなどないのかもしれない。しかしこのキッチン・ナイフをデザインするにあたって、いわゆる「産業主義的な認識」ではなくて、この国の高度な刃物の文化の正しい継承や、その現在の社会環境への新しい提言を意識したことは事実である。昨今の「刃物はすべて危険なものだ!」という間違った認識を、いまいちど考えるためのきっかけになれば幸いである。
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