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飛翔… 
風も光も、すべてのものがここち良い季節に、あれも、これもと、したいことが山のようにあって…。朝からばたばたしていたのだが、一休みしようと焚き火小屋の扉を開け放して仰いだ天空に、この『飛翔』があった!。

このおおらかなさまはどうだ!。まるで、どこまでも蒼い天空のそのさきの絹雲を、なにものかに見立てて、はるかな高みを、どこまでも、どこまでも飛翔するかのようだ!!。

気配…!。それともなにものかの残欠…!。はるか蒼穹のそのさきに、微かな記憶がうごめいた。

谷川岳一の倉沢の二ノ沢右壁の核心部を攀じり終えたスラブに「白根葵」の花があった。炎天下の閃緑岩の大岩壁の真っ只中の小さなクラックに、高山の強い日差しにあぶられ、葉も茎もぐちゃぐちゃによじれて、しかし、うすむらさきの美しい花が一輪、毅然を感じさせて咲いていた。

ソロだった。『岩と雪』の編集部から執筆の依頼があったオリジナルな「単独登攀時の安全確保技術」が、二ノ沢右壁のようなスラブ主体のルートで通用するかどうかを試してみたかったのだ。

「単独登攀」とは、原則的に「フリー・ソロ」だ。それが出来ないレベルのスキルしかないならするべきことではない。しかし、ボルトやハーケンにどうしても頼らざるしかなく、いやでも人工登攀を強いられるピッチなどで、ただただ「神のみぞ知る」に委ねるのも馬鹿げたことだ。だけに、こうしたシーンでの安全確保のための「単独登攀時の安全確保技術」が幾通りか開発されている。だが、その大半が、いわゆる「Z(ゼット)ピッチ」などと呼ばれるように、ロープをフィックスしつつ攀じり、登攀終了点も固定して、さらに、これを下降して再び登り直すという面倒なものでしかなかった。

取り立てて新しい技術の開発などを意識していたわけではない。だが、ふとしたことから閃くことがあって、そうした複雑なことを全くしないで済むオリジナルな「単独登攀時の安全確保技術」を見出したのだ。

「気品」と言うべきか!。それとも「高貴」と言うべきか!。そうしたものを感じさせる一輪の花を前に動けなかった。しかし、ここで確保用の支点をとらなければ、その先のスラブに残置ハーケンも無ければクラックも無い。「けがす!」とは、こう言うことかと感じつつこの花を手折り、ショイナードのチョックをセットして、次のスラブに入ったところで「クウ」と鳥の声を聴いた。

目が合ったと思えた刹那、その鳥が翔んだ!。

そして、一直線に飛翔するその姿が、はるかな蒼穹に点景となるころに、足元に、言葉などにしようのないほど不快な音が響くのを聞いた。

それだけのことだ!。
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